英語学習の臨界期は気にしなくてよい – 必要なのは 英語発話のプラクティス – Critical Period

Psychology

英語学習の臨界期は気にしなくてよい – 必要なのは 英語発話のプラクティス

この記事は MyPace English (MPE) の英会話講師との 研修資料の 一部を 抜粋・編集したものです。

はじめに: あるご父兄さまからの質問

Q  英語教育の * 臨界期は幼児期。 だから 英語教育は、幼児期(6才)の内に開始するのがベストと、以前プリスクールの見学会で 聞きました。 英会話は 8才からでは 遅すぎる と言う意味なのでしょうか?

* 臨界期: 幼児期に ある刺激 (経験・練習) が与えられたとき,その効果が最もよく現れる時期。
臨界期とよばれる年齢を過ぎると その実技の習得が不可能となる という説。

A そのプリスクールは 英語早期教育の必要性を訴えるため、やや行き過ぎた解釈をしていると思います。 

何故なら、第二言語習得における臨界期には 仮説 の2文字が付いて 臨界期仮説 (Critical Period Hypotheses)と 一般的に呼ばれています。 中学生から英語学習を始め、英語を使う職に就いている人も少なくありませんし、この人たちの 英語能力を 否定することはできません。

確かに 音楽の世界では、絶対音感の習得には 臨界期が存在し 6才を超えると 絶対音感を身に着ける事が 困難であると言われます。 ただ 英語のリスニング力と、絶対音感を 聴覚の臨界期と 一括りにして 考えるのは 短絡的な気がします。

英語早期教育のメリットについて 考えてみましょう。

幼児期に効果の高い 音声・韻律の体得を優先する 

MyPace English (以下 MPE) では子供英会話 の目的を:
聴力の臨界期にある子供たちの、生理的能力を発展・継続させること と定義しています。

これを達成するため、どのように キッズ英会話 個人レッスンを進行するのかを、説明します。

MPE が 成人受講者の 英語力を 計る際、ポイントは:
 センテンス(1文)の質
 文脈の質 (2~3センテンスで 質の高い説明ができているか?)
 音声・韻律(英語のオーラル・アウトプット)
英語を聞き取り力    の4項目です。

子供英会話の場合 MPE が中軸に置くのは 3 音声・韻律(英語のオーラル・アウトプット)です。
音声・韻律の 体得が上手な子は 4 英語を聞き取る力 も比例して向上します。

ポイント: 英語のリスニングが弱い人は、自分が発話する英語の発音と、聞き取る英語の発音 が違いすぎるから聞こえない。 つまり、リスニングのポイントは 耳でなく、口の動き と考えます。

3 口の動き と 4 英語の聞き取り力 の連動をレッスンで確認する。
これは 勉強というよりも、子供たちの 生理的能力を 効率的な手法で発展させる  に近いと思います。

備考: 1 センテンス作り(文法) 2 文脈の構成(語い量)に 関しては、暗記力で優れる 中学生の方が はるかに 飲み込みが早い。 1 センテンス作り(文法) 2 文脈の構成(語い量)に関しては、急がずに 進行してます。

Q キッズ英会話では、英語の口の形作り( フォニックス)が 最優先と考えれば よいのでしょうか? (講師よりの質問)

* フォニックス(phonics) : フォネティクス Phonetics(音声学)の基礎。 英語の音を 最小限の単位(音素)まで分解し、基本音素から英語の発音を教える教授法。

A まず、英語の音は * フォニックス(音声)と、イントネーション(韻律)が 両輪であって、フォニックスだけを優先することはありません。

キッズ英会話を 始めた 子供たちに 優先する事は、
apple – octopus – up の3つの母音を、英語の音素で3通りの違う音で再現することです。

日本語(カタカナ)では 上記3つの音は ップル – クトパス –ップ  と、すべて同じ と発音されます。
子供たちが カタカナ発音で ップル – クトパス – ップ と 同じ音で覚えてしまうと、後で aou の音を 3つの違う音に 直すのが難しくなります。

ですので、使用度が高く、直すのが難しい 母音 aou の音が、カタカナ化 するのを防ぐことが 先決です。

早期英語学習の課題は 聴覚と 口の運動をリンクさせること

* 自分の発話する英語と、実際の英語の発音の 差異が大きいうちは、英語のリスニングも苦手なままです。 自分が正しい英語の音で話すようになれば、英語のリスニング力は 大幅に改善されます。

* 参考: 言語学上の モーターセオリー(Motor theory of speech perception)
The motor theory of speech perception is the hypothesis that people perceive spoken words by identifying the vocal tract gestures with which they are pronounced rather than by identifying the sound patterns that speech generates. It originally claimed that speech perception is done through a specialized module that is innate and human-specific. Though the idea of a module has been qualified in more recent versions of the theory,[5] the idea remains that the role of the speech motor system is not only to produce speech articulations but also to detect them.
The theory was initially proposed in the Haskins Laboratories in the 1950s by Alvin Liberman and Franklin S. Cooper (引用 wikipedia より)

上記を基にして仮説を立てると:

 日本人が英語の聞き取りが苦手な主な理由は、英語の発音が カタカナ基準で、本来の英語の音との 差異が大きいからです。

 日本語は 等時間隔の言語。 英語は ストレス・タイミングの言語。 2つの違いは、母音、特に弱母音の有無によるところが大きい。 → 弱母音が体得できれば、ストレス・タイミングの韻律が 自然に身につく。
例) (日本語)チョコレート (英語)チョクリット → 英語では 2か所 弱母音があるため、ストレス(強弱)が発生し、発話時間が短くなっている。

 英語学習に臨界期があるのではなく、日本の英語教育では 文法を中心とした 統語論(Syntax)が 中心で、音声(Phonetics)、韻律 (Prosody)の学習が ほとんど割愛されている。
英語の発音矯正 を受けた経験のある人も少ないし、英語上級者でも 発音記号を 読み書きできる人は 少ない。 つまり 英語のリスニング、発音に関しては、多くの人が 独学であり、教育やプラクティスを受けたことが無い。

* 等時間隔 (isochronism)の発話: 抑揚の少ない 平坦な発話。/ isochronism – The Mobius strip-like entanglement between time and frequency, between analogue vibrations and discrete numbers, is the essence of a time mechanism that is both physical and symbolic at the same time

* ストレス・タイミングの言語: 音の強さ(ストレス・強勢)と長さが 発話の際 発生する言語。
例) banana は バナーナ のように ストレス・強勢のある 母音が 長く延びる。 これは 英単語 (acronymを除く)全てに共通するルール。

さいごに:
ソロバンの出来る子供は、よく指を動かして 暗算をしている。
ピアノを習っている子供は、音楽に合わせ 指を動かしている。
英語の口の 形作り も同じで、絶えず(正しい音で)発話している子が 聞き取りもできるようになる。

基本的に 言語は 左脳で操作するもの。 ただ、英語発音は 小脳系の訓練(エクササイズ)と考えると、整理しやすいと思います。

ピアノの手指の動きや両手の協調に関わる運動機能の臨界期は、7才~11才と言われています。 ただ、ピアノを習う子供全員がプロの演奏家を目指しているわけではありません。

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